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EMS-10 ヅダ

EMS-10ヅダという機体がある.その高機動性から扱いにくくエンジン特性はピーキーな機体だと思われているようだが,それは間違いだ.実はMS-06より運転は楽なのだ.さらに言うと,あらゆる機体のなかで最も運転しやすいのがEMS-10だ.

一般的な機体ではスラスターの最大推力付近ではスラスターの推力調整と方向転換は難しく,機動性を発揮するためには操縦者の技量が必要となる.ところが,EMS-10ではスラスターの最大推力付近でも,スラスターレバーの動きは重くなることはなく,レバーの動きに比例して推力が変わる.車でいうとトルクがフラットということだ.また,スラスターの方向転換では操縦桿が重くなることなく,適度なフィードバックを残しつつ,軽く動かすだけでスラスターの向きが変わる.そのため,新米パイロットでも限界まで機体を振り回すことができる.

その秘密は,実は脆弱なボディにあった.スラスターの急激な挙動をボディが伸びたり縮んだりして適度に吸収し,結果として機体は操縦者の所望の挙動をしていたのだ.ボディは伸縮の度に疲労してゆき,限界まで行くと疲労破壊に至る.ヅダが空中分解事故を起こす理由はここにある.

確か前世紀のスープラという車に同じようなチューンを施したチューナーがいたと言う記録が残っていたはずだ.