比例道

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麻酔が効かない体質

自分が麻酔が効かない体質なのが分かったのは22歳のとき.首筋の腫瘍を手術で摘出したときだ.部分麻酔を受けたのだが,まったく効かない.麻酔を受けたことは初めてだったので,こんなもんかと思い我慢していた.メスで皮膚を切ったり,ハサミみたいな刃物で筋を切ったり,全部分かる.それに痛い.腫瘍を掻き出すときはいちばん痛くて流石に「先生,痛いです」と泣きを入れた.先生は「あら,麻酔が効いてないね」と,麻酔注射を追加で打ってくれた.しかし,それでも全然効かない.とうとう麻酔なしで手術は最後まで終わってしまった.

その後40代になって,大腸の中にも腫瘍ができて,内視鏡で摘出手術をした.これも麻酔を打ってくれたのだが,例によって全然効かない.ただ,切るのは腫瘍の部位だけなので,痛いところは少なかった.手術後は2時間くらい眠らせてくれるんだが,麻酔が効いてないので,眠ることができない.無為な時間をベッドの中で過ごす羽目になった.虚しい.

50代になって不眠症を患ってしまい,睡眠導入剤を処方してもらっている.「飲んだら意識を失うように寝るので,パジャマを着てベッドのそばで飲むように」と言われている.効く薬らしい.しかし,飲んでも全く眠くならない.普通に起きていられる.飲むのは10mgまでとなっているが,あまりに効かないので倍の20mgを飲んでみた.やはり効かない.

これはもう眠れない体質なんだと思うしかない.この性質を有効に使う方が建設的だ.24時間車や飛行機を運転し続けるとか,24時間何かを監視するとか.そういうのだったら天職ではないか.

はたまた,敵のエージェントが撃ってくる麻酔弾を何発くらっても動きが止まらないスーパーヒーローになるのだって良い.自分の才能を生かして仕事を変えた方がよいようだ.